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  • 認知学習論(春学期)

    先端開拓科目-環境情報-生命と身体 (学部) 2単位
    担当教員:今井むつみ
    開講日程:金曜日4時限
    >シラバス参照 ※CNSアカウントが必要です。

    授業概要

    「学習」というと一般的には「学校で習う勉強」を考えがちであるが、
    人間の学習とはず っと多種多様で幅広いものである。
    子どものことばや概念の学習、読み書きの学習のような日常生活を通して行われる学習、
    主に学校教育を通じて学ばれる物理学、数学などの学 術の学習から、
    チェスや碁、音楽などの分野での学習、までを射程とし、
    それぞれのタイプの学習で知識、技能が習熟していく認知メカニズムを分析する。

    この分析を通じて古い学習観にしばられない、発見的、創造的学習とは何か、
    それを支える認知機能とは何かを 考える。
    また、真の理解を伴う学習を促す学習環境の構築について考える。

    テキスト

    教科書

    今井むつみ・野島久雄 「人が学ぶということ:認知学習論の視点から」北樹出版

    参考図書

    市川力 「子どもに英語を教えるな」中公新書ラクレ
    今井むつみ著 「ことばと思考」岩波新書
    今井むつみ著 「レキシコンの構築」  岩波書店
    今井むつみ(編)「心の生得性」共立出版
    大津由紀雄(編)「小学校での英語は必要ない!」慶應大学出版会
    稲垣佳代子、波多野誼余夫著 「人はいかに学ぶか:日常認知の世界」中公新書
    ジーン・レイヴ著 無藤・山下・中野・中村訳 「日常生活の認知行動」新曜社
    上野健爾・新井紀子 数学は言葉 東京図書

    評価

    小レポートを1,2回課す予定。
    成績は期末テストの成績、レポート、出席を総合して評価する。 

    授業計画

    1. 授業ガイダンス、認知科学の学習観

    授業ガイダンスと「認知学習論」の考え方の紹介。古い学習観、行動主義の学習観を紹介し、
    最近の認知科学の視点からの学習観と対比する。履修者全員で「学習とは何か」をあらためて考える。

    2. 学習とは何か 乳幼児の概念の学習と発達

    子どもは日常生活の中からどのようにしてことばと概念を学習するのだろうか?
    この回は乳児が自分をとりまく世界についてどのような知識をもっているか、
    どのように日常世界に起こる物理法則や因果関係などを学習していくのかを議論し、
    人間の日常的、直観的認知学習の根本にあるものは何かを考える。

    3. ことばの学習を可能にする能力

    人間はどのような文化でも、誰もが難なく言語を学習する。
    この学習能力の背景にあるものは何なのか?
    この問題をチンパンジーにおける言語学習や外国語学習の観点から考察する。
    また、人間の学習とコンピュータの学習を比較し、
    ヒトという種の持つ独特の学習能力について考察する

    4. 第二言語の学習

    バイリンガルとは認知的にどのように定義されるのか、認知的にどのように意味があるのか。
    また、子どもによる母国語の学習メカニズムと大人による第2言語の学習のメカニズムの違いを考える。
    また早期英語教育の是非についても議論する。

    5. 科学概念の学習と概念変化I

    人間にとって自然に、そして直観的に容易に学習できる領域と
    直観が障害になり直観的理解を克服し概念変化を経なければ学習が達成できない領域とがある。

    この章ではどのような領域で「概念変化」が必要なのか、
    「概念変化」がどのようにして起こるのか、
    あるいは概念変化をどのような工夫で促進させることができるのかなどを議論し、
    「概念変化」という視点から子どもの算数や理科におけるつまずきを考察する。

    6. 科学概念の学習と概念変化 II

    誤概念を克服し、概念変化を引き起こすにはどうしたらよいのかを議論する

    7. 数・数学の概念の発達と数学学習

    ヒトは数についてどのような素朴な理論を持つか、数の概念と言語との関係、
    数学を学ぶということは究極的に何を学ぶということなのか、などを議論する。

    8. 問題解決の熟達

    問題解決の分野での初心者とエキスパートの違いを考え、
    一般の人が持つ物理や生物についての理解や思考プロセスと科学者のそれは
    どのように違うのかを議論する。
    また、科学者による「科学的発見」はどのようなプロセスから生まれるのかを考える。

    9. 認知学習論から考えるよりよい学び I

    東京コミュニティスクールの市川力さんをゲストによび、日本において、
    これからめざす新しい教育の形について議論する

    10. 学習のしかたの学習

    今井研で行っている試み(現場教師との探求型学習のためのワークショップ)の他、
    紹介し、日本の教育を変えていくために何をしなければならないか、
    何ができるかを履修者全員で議論する

    11. 学習と熟達の脳科学

    学習が進み、熟達すると認知機能、脳の働き方にどのような変化が現れるのか。
    学習と熟達について脳科学から迫る

    12. 技の熟達

    スポーツ、芸術などの分野での熟達過程と熟達の要件について議論する

    13. まとめ





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