情報閲覧:第3回ITSミーティングログ(2011/05/07)
第3回ITSミーティングを行いました。概要は以下の通り。
今井むつみ「認知学習論」 *全部で6パートあります
学びというのは、学校の中だけで起きるものではありません。学校の外で自然に子どもが行っている様々な学び――例えば言語(母語)の学習など――から、人にとって学びとは何なのかについて考えていくことは大事です。日常生活の中での自然な学びの過程と性質を理解することから学校教育での学びについて深い示唆が得られます。この観点から何回かのシリーズを通して人の学びについて考えていきます。人の学びのメカニズムを知るためには、人の知覚の仕組み、記憶のメカニズム、人の推論の方法など、多くの問題を考えていく必要があります。これらのことについても折に触れてお話していこうと思いますが、まず最初に人の学習能力を理解するために人以外のモノ、例えばヒト以外の動物やコンピュータ、ロボットと人の学習がどのように違うかを考えていくことにしましょう。人と動物、人とロボットでは思考プロセスの何が違うのでしょうか。(動画では人とチンパンジーの違いについて中心に取り上げています。)
一般的に人はチンパンジーよりも知的に優れていると考えられていますが、すべての認知能力で人のほうがチンパンジーよりも優秀なわけではありません。例えば瞬間的な記憶は人よりもチンパンジーのほうが優れているということを示した研究があります。しかし、必ずしも瞬間的な記憶が優れているからチンパンジーの認知能力が人よりも優れているという結論は導き出せません。人は発達につれて、入って来る情報を記憶をするのに、情報をすでに持っている知識に照らし合わせた上で記憶しようとするので、チンパンジーのように見たものをそのまま記憶する必要がないのです。人の発達でも、赤ちゃんのほうが大人よりもできることがあります。例えば言語の音の区別などです。日本人の大人は英語の rとlの区別ができない人がほとんどですが、生後10 カ月くらまでの赤ちゃんはこの区別ができます。しかし、この区別は母語の学習に役にたたないので、区別をするのに必要な音の特性に注意を向けることを止めてしまうのです。このように、「学び」を理解する上で、人の情報処理の仕組みを理解することはとても大事ですし、それが動物やコンピュータの情報処理のしかたとどのように違うのかを理解することも大事です。
井庭崇 *現在編集中
情報閲覧:第2回ITSミーティングログ(2011/03/05)
第2回ITSミーティングを行いました。概要は以下の通り。
市川力「探究教師を支える3つの力」 *全部で4パートあります
探究教師となるには、『実践の知慧』『創造の技法』『学びの理論』の3つを備えていなければなりません。(詳細図はコチラ)『実践の知慧』とは教師が探究型の学びを子どもたちとつむいでゆく「術」です。決して一筋縄ではいかない泥くさい探究の過程をどう歩んでゆくか、みんなで共有できるように言語化したものこそ『実践の知慧』と呼ぶに値するでしょう。そのためには、教室を探究心の渦巻く場とするための「技」を明らかにする必要があります。それは、これまでのように教師が教壇から一方的に知識を伝授するやり方とはまったく対極なやり方です。子どもたちの輪の中に加わり、一緒にコラボレートしていく「創造の技法」が求められるのです。さらに『実践の知慧』を「術」として共有する上で不可欠なのが、『学習の理論』による裏づけです。そもそも人の記憶とはどのようなメカニズムなのか、人が知識を得るとはどういうことなのか、学びのプロセスをどうとらえるべきかという「理」を体得することで、日々の実践にフィロソフィーが宿ると言えましょう。
井庭崇 *現在編集中
情報閲覧:第1回ITSミーティングログ(2011/01/08)
新生、ITSミーティングの第1回を行いました。概要は以下の通り。
今井むつみ「認知科学から見た学び」 *全部で3パートあります
- 概念変化について
自身が持つ素朴概念とは違う新しい概念は、聞いて「記憶」することは出来ても「理解」することは出来ません。自分で納得出来ることが、概念変化には大切です。
- 学習とは何か
学習とは@新しいものを吸収していくことに加え、A余分なものを排除していくことが重要です。このAが見過ごされることが多いのですが、これが熟達者になるには大切です。
市川力「探究学習の実践例の紹介」 *全部で6パートあります
前回に引き続き、探究授業とはどのようなものであるかの体験しました。また井庭の話を受けて、教え手が学ぶ際のラーニングパターンを作成していくのが良いのではないかという意見がありました。
井庭崇(慶應義塾大学総合政策学部准教授)によるラーニングパターンの紹介
「創造的な学び」を実践する際のちょっとしたコツとは何か。ホームページ(コチラ)に詳細があります。元は大学生向けに作られたプロジェクト成果のため、記されているコツも大学生向けのものです。今後、この子供向けバージョンを作成してみたいという意見がありました。
ディスカッション
「Inquirer’sチームとして機能するためには何が必要か」をテーマにグループに分かれてディスカッションを行いました。話の前提である探究者とは何かを問い始めるなど、グループによって出された結論は様々でした。